CNS/NP y.m. diary

北海道で慢性疾患専門看護師/プライマリーケア診療看護師をしている看護師が日常のことを記事に

「患者に寄り添う」をより深く考える

3月も最終週を迎えようとしています。新年度まであと少し、色々と準備が忙しくなってきますね。

 

さて、一昨日ツイッターで「患者に寄り添う」っていうことは、どの国でも通じる言葉ではないのかとつぶやいたところ、カナダでナースプラクティショナーをしているの野々内美加さんから、あるコメントを頂きました。

 

https://blog.goo.ne.jp/missy0806/e/c9785e47c2246c4409f703e7f1e53de7

 

看護師の役割や看護について、しっかりと言語化がされていて、とても勉強になる内容でした。私の一言にここまで誠実に考えて頂き本当に感謝しています。

 

さて、なぜ私が「患者に寄り添う」を重要とするか。勉強不足でありますが、一個人の看護観について書いてみようと思います。

 

野々内さんのブログにもあるように、「寄り添う」という言葉はとても幅広い解釈がされる言葉だと思います。一般の方が使うときには、「その人の傍にいる」という物理的意味あいが強い言葉かと思います。つまり患者の手を握ったりの様子ですね。しかし、看護師や医療者が使う「寄り添う」は物理的な意味だけではなく、心理的な意味あいが強いかもしれません。私が考える「寄り添う」はMargaret Jean Harman Watson がいう、トランスパーソナルケアにある、「人との関係性」が近いかなと考えています。

 

Watsonはご存知ヒューマンケアリング理論を唱え、人と人との関係性のなかでケアリングが成り立ち、そのケアリングのなかのスピリチュアルやヒーリング(癒し)の側面などでこのトランスパーソナルケアが用いられています。彼女は「看護は、心に深くはいっていくような、ケアリングと癒しの実践と関係を築くことが専門職である」とも語っています。詳しいことを語るにはまだまだ勉強不足なのですが、ケアやケアリングを行ううえで、関係性の構築に必要な要素であるのかと考えます。

 

私が考える看護師の役割は「対象者の生きるをサポートすること」を第一に考えています。すなわち、健康の維持、疾患管理、疾患を抱える患者の生活支援はもちろん、家族の健康、地域の健康、対象は個人から地域、社会と様々です。そして、それは理論やサイエンス(近代医学的)の要素が多く用いられています。

 

しかし、一方で対象者との関係性の構築にはサイエンスの側面だけでなく、スピリチュアル、ヒーリングの側面が重要だと思います。そして、対象者のことを理解する上では想像力やその人を慮る(おもんぱかる)力が重要だと思っています。

 

先日、沖縄で行われた日本病院総合診療医学会で私の病院のDrが「NPは患者に対するアプローチが医師と違う」と口演してくださいました。大変ありがたいのですが、私としては「高度実践看護師」全般が行っているであろう、患者アプローチを実践しているだけのことなんです。

 

たとえば、医師は診断や治療に関することを中心に情報を集めます。もちろん、入院治療の上ではこの情報で十分なことが多いです。しかし、なかには関係性をつくらないと病気の本質にたどり着かないことがあったり、psychologicalな問題に関しては、そこにアプローチする上でその関係性が非常に重要であったりします。あるいは、治療の方向性を決める上では対象者の秘めた思いを聞き出せることが重要だったりします。だから、医師からは私の情報がすごく役立つと感謝されることが度々あります。(単にうちのDrがそこが苦手なだけな気もするんですけど💦)

 

単に「仲良くなる」「いい関係を築く」でもいいのかもしれません。でも、それだけでは足りないこともあり、ある時期からそれ以上に関係性を築くことを心がけるようになりました。もちろん、すべての対象者とそのような関係性を築けるわけもなく、非常に限られたことです。ヘンダーソンが「患者の皮膚の内側に入り込んで」と表現しているように、患者の身になっていまの状況をとらえるようになると、患者がどうしてほしいのか(ニードの把握)やその時感じている思いを、患者が感じる感覚のようにが分かることがあります。

 

そして、その思いや感覚をケアや治療の方向性に織り交ぜていくと、ケアや治療に対する患者の満足が高くなると考えています。(看護師にとってはあたりまえのことすぎて、なんだか普通なこと書いてますね💦)

 

私がケアや治療を行う前提として、患者との関係性を重要視しているのはこういった理由があります。そして、頂いた情報を臨床推論を使い診断やケアや治療に活かす。そしてそのように行ったケアや治療は、また患者の癒しにつながる。

 

「看護はサイエンスであり、アートでもある。」

 

僕の目指す看護はそんなところにあります。この考えはミクロな考えなのかもしれません。しかし、日本の日本人のための看護ってなんだろうと考えたときに、「患者に寄り添う」という要素は絶対欠かせないものだと思っています。多死社会を迎えた日本だからこそ、医学やサイエンスだけで対象者をとらえるのではなく、それを超えた視点でケアや治療を行っていきたいと考えています。

 

とはいえ、野々内さんの書かれている内容はもっともなことで、日本の看護師も見習っていかなくてはならないことがたくさんありますね。私がつぶやいた「患者に寄り添って」でここまでのやりとりができるなんて、本当にとてもいい機会になりました。

 

私のなかでもあいまいな部分は多々ありますし、しっかりと言語化していくことが大事だと考えています。考えることって大事ですね、専門看護師になってもまだまだ学ぶべきことは多いです。最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

 

 

 

 

日本のNPはどこで、なにをしている?

3月卒業シーズン、NP試験を終えられた皆様は、来年度の活動の準備に忙しくされていると思います。

 

さて、日本の診療看護師(NP)はどこで、どんな活動をしているのでしょうか?

その実態は・・・実は僕も詳細はよくわかりません。いづれどこかの段階で調査されることが望ましいと思いますが。

 

アメリカでは、分野別ではFamily nurse practitionerが最多で、外来診療、クリニックでの従事が多く、 プライマリーケアを主軸としているNPが多いんですよね。

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Distribution, Top Practice Setting and Clinical Focus Area by Area of NP Certification 3

引用元:

https://storage.aanp.org/www/documents/Npfacts.pdf

 

私が昨年、参加させて頂いた、NP教育課程の修了生の交流会(今年は2019年3月13日に開催)で得た情報と、個人的に交流させて頂いているNPさんからの情報をまとめると

一言でいうと、『働き方のばらつきは大きい』です。

 

日本のNP教育課程は大きく「クリティカル領域」と「プライマリー領域」に分かれて、両コースとも持ち合わせているところと、どちらか一方の課程をひらいている学校があります。ただし、現在のところ全体のコース受講割合は「クリティカル領域」が多く、当然試験受験者、合格者も「クリティカル領域」が多く、おそらく圧倒的に病院にで従事している卒業生が多いでしょう。

 

ただし、卒業した後、アメリカのNPまでとはいかないものの、すべての卒業生がNPとして活動しているわけでもないようです。

 

私の知り合いでも、「業務時間の何割かは普通の看護師として働かなければならない。」「NPとしての活動はほぼしていない」という方もみかけます。あるいは、教員として働いている方も。これ以外にも、手術室で手術助手を専門として働いている方、いわゆるPhysician Assistant:PA として従事している方もいるようです。

 

なので、日本のNP有資格者がすべて純粋にNPとして働いているわけでもないのが実情のようです。

 

では、私の病院のNPはというと、先日のNP学会でも提示したように、Hospitalistタイプ、CNS/NPタイプ、PAタイプに分かれています。もちろん、それだけの仕事しかしていないのではなく、それぞれの仕事はオーバーラップしてます。

 

Hospitalistタイプは病棟管理が中心で、受け持ちを行い、医学的な管理から社会的な調整までおこなっています。

 

「医学的な管理ってどこまでやるの?」

簡単に言えば、NPが行えない医行為以外すべてをしています。(もちろん医師の監督下で)患者の検査の組み立て、点滴、処方の見直し(処方権はないので、処方はできません)、病状説明(NPの権限で行える範囲すべて)、各科へのコンサルト。手術室に入って手術をしたりはしませんが、病棟管理はほぼまかせておけます。※注意:重ねていいますが、医師の監督下で行っており、単独診療は一切行っていません。

 

CNS/NPタイプ

つまり、私の働き方ですが。NP学会ではCNS型NPとして紹介しましたが、その後無事CNSを取得しましたので、CNS/NPとして表記を変えました。今現在は総合診療部に所属し、受け持ちをせず、入院された患者すべてにアプローチします。Hospitalist型と違うのは①受け持ちはしない、②病状管理は医師とともに、③看護チームや他職種のなかでリーダー的マネジメントをしている、でしょうか。

この働き方を選択したのは、医学的管理に重点をおくHospitalistと特色をわけて、日本の現状の医療にマッチしやすいタイプのNPを「試してみたかった」からです。どれだけ、医学的管理が優れていても、チームがそれに追いついていなければ、いい結果をだすことはできません。だから、定期のカンファレンスだけじゃなく、適時に他職種が意見交換、情報交換、ケアの方向性の確認を行い、普段から医師が看護チームの意向、看護師が医師の治療の意向を確認できる橋渡し役になれればと思っていました。そして、医師があまりやりたがらない、subproblemへの介入を重点に活動を行っています。とはいいつつも、処方提案や病状説明などHospitalist型とオーバーラップしている部分も多いです。

 

最後にPAタイプ

PAと表記していますが、手術室だけでなく病棟管理も医師とともに行っています。こちらも、他のNPとオーバーラップしている部分があります。そして、外来診療にも参加しているのが、上の二つのNPと違うところでしょうか。

 

これ以外にも、他の病院ではERに専従していたり、麻酔看護師として働いていたり、老健訪問看護ステーションにいたりと、本当に活動の場は多岐にわたっています。

 

日本の未来を考えると、地域で活躍できるNPが多くなることが望ましいのでしょうが、私としてはまずは病院での研修をして、それから地域で活躍するというスタイルが一番いいかなと考えているので、現状では病院で働くNPさんが多くても仕方ないかなと思います。

 

NPの活躍の場は広がっていていますが、日本におけるその役割がなんなのかを一般化しつつ、アウトカムをだしていくことが求められますね。

 

私が診療看護師(NP)を目指した理由

※このブログは個人的な意見を記載されており、組織の方針とは異なることが記載されている可能性がありますので、ご理解ください。

 

まずは、第9回NP試験に合格された方、おめでとうございます!そして、入学してから卒業まで、本当にお疲れ様でした。論文書きながら、実習をこなして、本当に血がにじむ思いだったと思います。

 

さて、筆不精な私がブログを書いてみようかと思ったのは、同じくNPを目指しているツイッターのフォロワーさんから執筆依頼を受けたことです(現在作成中)

 

自分も歩み始めたばかりのつたないNPなので、皆さんが驚くようなことは書けないと思いますが、これからNPやCNSを目指す人の参考になることがあればと思い筆をとりました。

 

『 診療看護師(NP)をめざした理由 』

おそらく多くの診療看護師が、自分のスキルアップ、そして組織/社会への貢献、なにより患者のためにという思いでこの道を目指していると思います。

 

私も同じように、最初は単なる「憧れ」、そして年齢的に本気でキャリアを考えるようになったことからはじまりました。

 

最初にNPを目指すきっかけとなったのは、いまから18年も前に海外のNPの活躍を知ったことでした。大分県立看護科学大学でNPコースが設立されたのち、母校でNPコースが設立され、淡い夢が現実的なものになりました。

 

そのころ、救急外来で中間管理職をしていた私がたまたま母校へ行く機会があり、現在のNPコースの教授と面識を持つようになりました。後に自分の職場がNPコースの実習先となり(当時は特定看護師養成試行事業という名目で)、そのお手伝いさせて頂くようになったことも、私自身が進学する意識づけになったのだと思います。

 

ただ、進学する上でハードルとなったのが、学費が工面できるかと、仕事と学業の両立ができるかの2点でした。これは、進学を考える上でどなたもが一度は悩む問題ではないでしょうか?

私の場合は、幸いにもすでにNPコースに進学していた者がいたため、長期履修で働きながら修業できたことと、実習期間中(休職中)の給与サポートが設定されていたことが大きかったですね。本当に助かりました。

全国各地でNPコースをもつ大学院が増えてきていますが、長期履修が認められているところと、認めてはいるが現実的に働きながらでは履修できないところとあり、進学する学校により働き方・学び方を考えなくてはならない状況があるようです。

 

私は、元々大学で地域看護学講座を専攻しており、いずれは地域看護/地域医療で役立つスキルを身につけ、活動したいと思っていました。私の住む北海道札幌市およびその周辺は全国でも有数の高齢化/高齢者増加が著しいところです。そんななかで地域医療は超高齢化医療の需要を満たすほど受け皿がなく、その質も不安定な状況が続いています。そんな状況を少しでも良くできないかと思っていることが、私がNPを目指す一番のモチベーションに繫がっています。

 

『 看護師の基本は「患者に寄り添い、患者の健康を維持/向上させること」 』

 

この視点はNPとしての基本姿勢に通じるところです。看護師と違うのは、医学的知識を日常のケアや判断に活かすことだと思います。いまだに風邪に抗菌薬が使われていたり、重複した薬を飲んでいたり、副作用がでているのに処方のカスケードがされていたり、ワクチンが適切に接種されていなかったり、生活習慣病薬物療法以外のアプローチがされていなかったり、高齢者に過剰医療がされていたり、地域には多くの問題が存在しています。

もちろん、私一人だけの力でこれを変えることはできないので、地域の看護師や医療・福祉従事者を巻き込んで、地域医療の向上に寄与できればと思っています。

 

そして、看護師、医療・福祉従事者へのエンパワーメントも重要な役割だと思います。小さい病院や診療所、訪問看護ステーション、施設などでは教育システムが十分でないところもあるかと思います。そういったところへ教育サポートすることも大事な地域医療の発展につながるかと思います。もちろん地域住民への健康教育も。

 

病院だけで看護をする時代はとっくに終わりました。地域での看護力は日本のこれからの医療の良し悪しを大きく左右するものです。

 

前回のNP学会でも発表したように「地域医療への貢献」「看護師のみならず、すべての医療・福祉従事者へのエンパワーメント」そして、「患者のヘルスアウトカムの向上」これはプライマリーケアNPが目指すべき重要な役割だと思っています。

 

長々、お読み頂きましてありがとうございます。続編をお楽しみに。